...ということをここ暫く考えていたが、今のところの結論は、「しない」。
トランスポートのコモディティ化を予期する人、望む人は山ほどいるだろう。ユーザとしては、とにかく安くて速ければよい。トランスポートは単なるコストであり、経営資源はもっと別のところに振り向けたい。通信事業者としても、重要なのはサーヴィスやアプリケーションであり、トランスポートではない。付加価値をいかに付けられるかが勝負と認識している。
上記は正しい。正しいけれども、ある側面しか捉えていない、とも思う。
SONET/SDH、TDM網による回線提供が続いていれば、普及とともにコモデティ化される可能性が高かった筈だ。ふるまいがdeterministicであり、誰が設計したところで、均一の品質を提供しやすい。しかし、ある意味逆説的だが、そいういうものは高値で留まり、「速くて安い」を追求する結果、IP網によりトランスポートを提供する道を選んだ。
しかし、IP網に使われるControl Planeは自律分散的で、しかもそのふるまいはdeterministicからは程遠い。拮抗する要素も多い。「高速検知・迂回」対「Fault Tolerance(Graceful-restart, NSF, NSR..)」、「自己回復性(Resiliency)・柔軟性」対「パスの明示性・管理性」、「接続性」対「セキュリティ」、「高精度性」対「スケーラビリティ」...。多変量解析、複雑系の世界で、予測もしにくい。設計者の匙加減によって、かなり提供品質、というか性質が異なることになる。非常にセンスの良いネットワークおよびシステムアーキテクトが必要。これはコモディティ化とは相容れない。
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トランスポートの今後の一つの方向性となるのは、「オブジェクト化」、「モジュラー化」ではないだろうか。そのオブジェクト、モジュールを表すクラスとしての各種属性、メトリック、そして相互作用のためのインタフェースが明確になれば、「良い設計」が正当な対価を得ることができる。正当な対価を得ることができれば、ますますセンスの良いアーキテクトが育ってくるだろう。IP網の品質定義や向上もし易くなる。
勿論、IP網としては伝統的な「End-to-End」という選択肢もある。
垂直統合的なアプローチとして「End-to-End」、水平統合的なアプローチとして「Object-Oriented/Modularized」というのが、今後の一つの概念指針になるかな、と思う。
トランスポートをOOA/OODできるのかなぁ、、、インターネットじゃなきゃできそうですが、、、インターネットで重要なのは「関係」でしょ。;)
そこがだめになってきてるから、オブジェクト化で見せなくするってのは足元が崩れていくのを見ないふりするオーバーレイネットワークの発想と変わらないし、そんな話じゃなさそうだし、、、もう少し解説してください。
投稿情報: tss | 2007.04.05 18:46
tssさま、
> インターネットで重要なのは「関係」でしょ。;)
そう、ここでもキーは「関係性」なのです!!!
・ 「関係性」は必ずしも明示せずに、包括的に一つの系と捉えるのが「End-to-End」
・ 「関係性」を切り出して明示するのが、ここで私の言いたかった「オブジェクト化」、「モジュラー化」
投稿情報: miya | 2007.04.05 23:26
オブジェクト化で関係性を明示する!?
おぉ、それ、某経営情報系の小さな研究会で某現代音楽家を中心にホットに議論してたりします。一度お誘いしたいです。
ちなみに、トランス"ポート"に"リンク"を抽象化して入れ込んじゃうんだとEnd-to-Endと変わらないですよね。そうじゃないとすると、、、
投稿情報: tss | 2007.04.06 07:20
tssさま、
明示する際に、ある程度の(かなりの?)仮定と割り切りが必要になってしまうであろうところがチャレンジです...。
「End-to-Endと変わらない...」のところはちょっとよくわかりませんでした。End-to-Endの捉え方が少し異なっているのかもしれません。
ところで"現代音楽家"というのに惹かれました。興味津々です。
投稿情報: miya | 2007.04.06 10:18
使う人の意思とか、使ってほしい人の思惑とかが、 object として routing に表現されるのかなあ。
関係は、point-to-point とか、end-to-end ではなくて、context で括れる仲間たちが network のなかに object として表現されるのだと思うと、すっきりするなあ。
ますます、p2p routing の概念と、抽象化可能な forwarding のいじり方に想いが及びます。:-)
投稿情報: satoru | 2007.04.07 21:24
satoruさま、
待ってました!コメントありがとうございます。
問題は、「抽象化」を適切に行えるのか、ですよね。ぜひ一緒に考えてください。
投稿情報: miya | 2007.04.07 21:54
「トランスポート」が何を指すかによるかと。。。(語義によっては、すでにコモディティ化されたと見ることも。。。)
投稿情報: [email protected] | 2007.04.09 17:59
wataruさま、
すみません、確かに「トランスポート」という言葉を、定義せずに使いました。
Internet系ではLocatorをエンドポイントとした通信路が「トランスポート」であり、またNGN系でも「Transport Stratum」というものがありますので、敢えて定義しませずに「そんな感じ」で使いました。両者とも"レイヤは明示せず何となく通信路"、というところで符合しています。(OSIのトランスポート層とは違います。)
ところで、
> 語義によっては、すでにコモディティ化されたと見ることも。。。
これはどのような語義でしょう。もし宜しかったら教えて下さい。
投稿情報: miya | 2007.04.10 00:24
>> 語義によっては、すでにコモディティ化されたと見ることも。。。
> これはどのような語義でしょう。もし宜しかったら教えて下さい。
「トランスポート」というのは、ある想定するサービスに対してそれを具現化するために必要となる「のりもの」(=輸送手段)ということなのだと思います。
たとえていうのなら、Internet系の方がおっしゃる「回線」というものも、ITU系からみれば「トランスポート」です。ISDNもSDHもATMも、ISDNやSDHやATMを提供している側からみると、ユーザに対して「トランスポート」を提供している。ITU系の標準化で議論されているNGN系における「トランスポート」は、どちらかというと、Internet系の方がおっしゃる「回線」になるのかと思います。(NGNの根幹となる、3G/4GのIMSの議論然り。携帯のhttp系は非IMSなアプリケーション?)
さらにアプリケーションの方から見れば、ISP等が提供するIP接続性の提供も「トランスポート」の提供です。
アプリケーションからみた「トランスポート」であるところの、一般ユーザのブロードバンドなインターネット接続については、日本でそれを買うというのは、いまやかなり「コモディティ化」されています。(どのプロバイダを使うかは事実上価格判断。。。)
コモディティ化の先には淘汰があり、銅線とかファイバの世界は日本においてはそこまでいきついているかと思います。(投資インセンティブが働かない→国有化&開放議論)
「トランスポート」としての携帯もだんだんそうなってきているかと思います。
(ここから先の議論は別途face-to-faceの時の方がいいかも。。。)
投稿情報: [email protected] | 2007.04.11 09:31
整理できてないまま書くのも躊躇するのですが、Web services の世界の各種概念・設計体系「オブジェクト化」、「モジュラー化」「インタフェース化」を、逆方向・下方向に写像するシナリオに将来性はありませんか?
過去の例が思い浮かばずおりますが…
投稿情報: 流しの戯言師 | 2007.05.20 00:28