経路の爆発。これはインターネットを安定に運用するために、避けなければならないこととして認識されている。以前も書いたが、Scalabilityへの意識はインターネットエンジニアリングにおいては至上課題である。そのため、基本的に集約化し、細分化やパンチングホールなどは必要最低限にとどめる必要がある。勿論、ルータの性能、集積度は上がっているが、全てのISPが常に上位機種にreplaceできる訳ではない。ネットワーク全体の安定性を保つためには、適度な抑制が必要になる。
IPv6のメリットの一つにアドレス集約があるが、やはりマルチホームしたい場合はPI(Provider Independent)アドレスを取得するか、パンチングホールするか、ということになり、結局集約することができなくなる。しかも、dual stackルータはv4とv6の経路の双方を持たなければならないし、さらに冗長性向上のためのequal cost/unequal cost multipath、QoS aware routing、Multi Topology Routing等、さらに経路を増大させる可能性のある技術開発が検討されている。単にメモリ容量の問題ではない。経路のlookup speed、障害時のconvergence speedおよびその処理のためのloadが問題になる。そして、大抵増加は各種相乗効果のため指数関数的曲線を示し、指数関数の行き着く先は破綻、という恐怖もある。(非力なマシンが経路処理負荷に耐え切れず、それが原因で広範囲に網をメルトダウンさせてしまう、という悪夢にうなされる。)
しかし冷静に考えてみよう。アドレスは、わりとフィジカルなものだ。例えばこんな試算がある。draft-baker-v6ops-l3-multihoming-analysis-00では、下記(*)の前提の下、multi-homed networkにPIアドレスを付与すると仮定すると、必要経路数は1,000万経路になる。
(*)
- 2050年には地球の人口は100億になる
- 2050年には、人口1000に対し、1つのmulti-homed networkがある
- 2050年には、地球上の全ての人間が、電話や郵便と同様にインターネットを使用する
1,000万というのは、確かにとてつもなく大きい数字だけれども、それでも40年後の数字がある程度予見できる、というのは、Manageableである、といってもよいのではないだろうか。その他、人間が扱うデヴァイスの数もフィジカルなものだし、さらにmulti-homeを必要とする網の数はそれらデヴァイスが増えても、然程増えないのではないかという見方もできる。
ムーアの法則は、微細化の限界、またそれ以前に消費電力の問題により、いずれ頭打ちになるであろうが、それでも需要がある限りはブレークスルーもあるのだと思う。単純ではないが、並列処理という方向性もある。こちらはアドレスに較べるとヴァーチャルな要素が結構あるのだ。
という訳で、最近は少しだけ楽天的である。勿論、抑制力は必要だけれども、常に冷静に動向を把握し、利便性を損なわない程度の抑制をしていけるとよい。
こんにちは。
これからは低遅延をもとめてもっともっとマルチホームが必要になるでしょう。交差点IXとか、、、
でも、それらの大半はグローバルにルーティングする必要はありません。
経路爆発を懸念してマルチホームを迷惑もの扱いするのではなく、ネットワークのありかたについてもっと柔軟な発想をしていくべきじゃないでしょうかね。
投稿情報: tss | 2006.10.12 09:56
言い忘れました。
"The" internet なんて終わってるんです。
投稿情報: tss | 2006.10.12 09:57
Global routabilityとGlobal reachabilityを別個に議論する必要あり、でしょうか。
Local routabilityの数珠繋ぎでもGlobal reachabilityは達成できます。さらに、transport layerのidentifierの付け替え・付け替えでもOK。(ATMのVCI/VPI然り?IPでいえばSrcNAT/DestNAT?)
それと、IP reachability、payload reachability、contents reachabilityを別個に議論する必要ありです。
i-modeなどは、contents reachabilityは達成しているが、IP / payload reachabilityはdon't care。
たいていのサービスは、contents reachabilityが達成できればOK?
// もしやtssさんって。。。
投稿情報: [email protected] | 2006.10.19 23:51
自分> // もしやtssさんって。。。
あ、私が知っていたfjによく投稿されていたTSSさんとは違っていたみたいです。
ごめんなさい。。。
投稿情報: [email protected] | 2006.10.20 00:16