ずいぶん前から薄々と感じていたことだけれども、帯域は勿論、Network規模、使い方、技術、どれをとってみても、日本は他国よりも進んでいる面が多い。日本人の美的感覚に「謙遜」とか「奥ゆかしさ」があるからであろうか、あまりそれをアピールしたり、笠に着たりはしないのだけれども。
最近RFC(RFC4377, Informational)になった、"OAM requirement for MPLS"というものがある。これはもともと、日本のオペレータより提起されたものだ。
通常のIP網では、”Routing Adjacency”と”Forwarding Adjacency”とは等しいのが通常だが、MPLSではForwarding PlaneとControl Planeが分離されており、フォワーディング隣接=ルーティング隣接とは限らない。また、Bugや過渡期的状況により、Control Plane (Routing Table, etc.)が正常でもForwarding Plane(LSP)が異常という事態が発生し得る。IP網の診断ツールとしては、ICMP echo(Ping, Traceroute )があるが、ICMP Pingでは、もしLSPに何らかの異常があったとしても、IP reachableであれば通ってしまう。MPLS網の場合、LSPのForwarding planeの状況を確認するための、ICMPとは別の方式・ツールが必要なのだ。
そこで、当時JTの松嶋さんが中心となり、IETFにdraftを提出した。しかしその時は、draftのポイントがTTL処理方法自体に主眼がおかれており、「TTL=1のLSPにパケットを送ってみてLSPのlivenessを確認する」というアイディアが、付加的に、し かも常時Monitor(keepalive)のための手法として記載されているに過ぎなかったため、残念ながら焦点が不明となり、あまり議論には至らなかった。
その後、米ヴェンダ(Cisco、Juniper)によりlsp-pingが標準化された(RFC4379)。このころのことは苦い悔恨とともに思い出される。問題提起、方式のアイデア等、同じようなものを大分前に出しかけていたのに、実装、標準化両面において、ずいぶん時間がかかってしまった。せめてもの救いは、松嶋さんに、RFC4377の共著者の一人として入っていただくことができたことだ。
時代を先取りする、というのは、あくまでも結果論であって、その時はずいぶんバランスの悪い要求に聞こえる場合がある。しかし、自らしっかり考え、必要と判断したらしっかりdriveしようと、強く思う。
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