startmac #3
技術者として駆け出しの私が、わくわくしながら、何度も繰り返し読んだ本がある。(今でも時々手に取る。今だから気づく新たな発見もあるし、初心を思い出し気を引き締めることもある。)それは、ジェラルド・M・ワインバーグとドナルド・A・ノーマン。両者とも人間とテクノロジーを鋭く、ユーモアのセンスをちりばめながら、観察、考察しているところが共通点だ。
ドナルド・ノーマンの方は、認知心理学者で、当時のApple Fellowである。テクノロジーは機能優先でデザインなんて二の次、という風潮もある中、人間と技術の相互作用、そしてテクノロジーの社会化ということを徹底的に追求していて、私はますますMacファンになった。特に、「フィールドワーク」と称して、デザインが悪いために人間が技術に振り回される羽目になっている例をつぶさに洗い出している件(くだり)は本当におかしくて、それ以来私もそういう目で観察する癖がついている。
まず、補足的に注意書きの紙が貼ってあるような場合は、殆どの場合、デザインが悪い。例えばドアのノブ。押すのか引くのか廻すのかが直感的にわからないような時、一回目の試行で当たらないのが世の常である。大体みんな、押したり引いたり叩いたり廻したりして、そのうち誰かが見かねて「PULL」とかいう貼り紙をする。ドリンクサーヴァーにも大抵貼り紙がしてある。コップは自動的に出てくるのか、自分で置くのか。いっぱいになるまでボタンを押し続けるのか、一回押すだけでよいのか。
パーソナルコンピュータのデザインは、その機能の多様性と複雑さを考えれば、よくできている方だと思う。dynabook構想から始まり、smalltalk, lisa, Macと、ヒューマンインタフェースにこだわった先人のおかげであろう。しかしデザインと関係ないところで困っているのがパスワードの管理。セキュリティ問題は今後ますます重要になるし、金融取引等をオンラインで行うので、何らかの保護は必須である。しかし、いくつものパスワードを暗記しておかなくてはならないのは辛い。有意な単語は許されず、さらに紙にメモするわけにいかず、しかも定期的に変更しなければならない。生体認証というのもあるが、使える場所は限られるし、しかも、あまりクリティカルな用途に使うのは躊躇するものがある。(犯罪に巻き込まれたら、認証を破るがために指を切られる、という可能性だって否定できない。) 何かよい方法は無いものか。
コメント