転職することになった。
唐突のような気もするし、長い逡巡の末、という気もする。あらゆる見地から検討したつもりだが、実は視野狭窄に陥っているかもしれない。とにかく、非常に多くの要因が集積し、決断するに至った。
一つ一つの要因は、かなり瑣末であるし、少なくともpublicなところに書くべきではないだろう。ただ、世にそして先輩諸氏に問いてみたいことがある。「大組織において、個人はどのようにイニシアティヴを発揮すべきだろうか。」
私はネットワークシステムにかかわる技術者としての道を歩んできた。そして、プロフェッショナルとしてさらに成長するためには、今後も技術を深く追求するのは勿論のこと、"+α"が必要になる。
現在の職場で求められる"+α"は、やはりビジネスの才覚であろう。何と言っても、お客様からビジネスを戴けるからご飯が食べられる訳で、当然である。
しかし、自分の内なる声に胸に手を当てよく耳を傾けると、私が技術"+α"として取り組みたいことは、実はビジネスそのものではない。もっと人間的なこと、社会的なことと、技術とのインタラクションである。技術的なことをベースに、哲学、心理学、社会学的なことをもっともっと勉強したい、と強く感じている。そして、長い目でみれば、このような取り組みも、ビジネスにも影響を与えることができると思う。
問題は、「長期的なこと」というのは、客観的には評価不能ということだ。評価するためのメトリックが無いし、長期的には刻々と前提条件も変化するので、何がどう影響してそうなったかを、証明することはできない。一方、大組織においてイニシアティヴを発揮するためには、最低限、やっていることを客観的かつ正当に評価して貰う必要がある。政治力や人望でぐいぐいひっぱるという手もあるだろうが、私にはそれがないし、例えあったとしても、それでも、最低限の評価は必須となる。
これが大組織でなければ、厳密に客観的な評価でなくても、「あの人だったらたぶん任せてよいだろう」、とか「あの人ならなんとなく信頼できる」とかいう、主観的かつ定性的な評価でも、イニシアティヴをある程度発揮できるのではないか、と思う。
今回の転職への期待はここにある。
そんな期待は虫が良すぎるかもしれないし、新しい職場にしても、その職場が大組織になって行く可能性は多分にあり(というか、そうでないと存続が危ぶまれるのがこの世界...)、その時は同じ壁にぶつかることになる。その辺は覚悟の上で、一から出直してみたい。
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最後になりましたが、Cisco Systems在職中は大変お世話になりました。今後とも、Cisco, Juniper, その他すべてひっくるめて、宜しくお願いします。(次の職場はJuniper Networksです。)業界全体のためになるような仕事がしたいと思っています。
いろいろ考えた末の結論ですから、これから応援しますよ。
またご一緒させていただける機会を楽しみにしてます。:-)
投稿情報: satoru | 2007.05.16 07:29
会社は変われど、今後ともよろしくお願いします。また、この先いっしょに仕事できればいいですね。そのときのためにも、自分もがんばります!
投稿情報: tetsuya | 2007.05.16 09:50
> 技術的なことをベースに、哲学、心理学、社会学的なことをもっともっと勉強したい
この当然の欲求がない人はだめですね。がんばってください。
# 予感はありました、、、
投稿情報: tss | 2007.05.16 12:25
自分のあるべき姿と、それを実現するための手段が明確に伝わってきました。
新天地でもご活躍ください。
投稿情報: あきりゃ | 2007.05.16 20:02
びっくりしました。既に僕も退職してしまいましたが、Cに入ったときに頂いた優しさと指導は僕なりに今も大切にしているつもりです。今後ともご活躍されると思います、次のご活躍を影ながら楽しみにしております。
投稿情報: Kentaro Akiyoshi | 2007.05.17 23:26
転職おめでとうございます。
> 技術的なことをベースに、哲学、心理学、社会学的なことをもっともっと勉強したい
私も全く同じようなことを考えています。この大変革期に何かを成し遂げようと思うなら、絶対的にこれらは必要だと思っています。単なるビジネスの才覚ももちろん大事でしょうが、小さな儲けではなく、深く大きく物事の本質を追求したいものですね。
> 厳密に客観的な評価でなくても、「あの人だったらたぶん任せてよいだろう」、とか「あの人ならなんとなく信頼できる」とかいう、主観的かつ定性的な評価でも。。。
全くそうですね。
私が最近思うに、いかに物知りだとか、ロジカルだとか、その気にさせるとかいうことよりも、いかに判断の質をあげるかが大事であり、それをどう達成するかをかなり真剣に考えてはじめています。それがその人の評価を決めていくのではないかと仮説しています。
ひとつ質問。
実は私は昔いた大会社でも今の小さな会社でも、組織の中でイニシアティブをとりたいという意思はあまりなく、むしろ社会や業界に対してイニシアティブをとりたいということを目標にしておりました(全然できてませんが(汗))。
kohnoさんの活動を拝見していると私と同じような目標なのかなと思っていましたが、やはり会社の中での立ち位置をしっかりさせたい、という意図なんでしょうか?
投稿情報: あらの | 2007.05.18 02:04
コメント下さった皆様、ありがとうございます。戴いたメッセージを励みにして精進します。
> あらのさん
ありがとうございます。戴いた質問に答えてみます。
個人としての方向性と、その所属組織の方向性は、完全にとは言わないまでも、ある程度はalignしている必要はありますよね。組織の価値基準と自分の方向性との乖離が閾値を超えたら、やはり留まるべきではありません。
ただ、価値基準を作って行くのも組織の一員としての役割であり、力不足だった点があったことは確かです。そういうところも含めて今後のチャレンジです。
投稿情報: Miya | 2007.05.18 11:28
本当にご苦労さまでした。また、お世話になりました。
個人(自分)と組織の価値観が異なったときは、非常に傲慢なのかも知れませんが個人(自分)を信じて進むことにしていますが、結構シンドイですが性分なので諦めています。(笑)
自分が自分らしくなくなったらそれは”死”に等しいですからねー。
残っている者としては、優秀な個が生き生きと活躍できるような環境を作るように努力してみます。
とにかく、新しい所が、技術"+α"に純粋に取り組めるような環境で、ご活躍されることを心からお祈りしております。
初給料日にはタカリに行きますのでよろしく御願いしますね。(笑)
投稿情報: Toku | 2007.05.19 08:01
私が好きな物書きの一人、というか世界的な博打打ちに森巣博という人がいます。
(「森巣」は奥様のテッサ・「モーリス」・スズキ(社会学者)からとったみたい)
彼曰く、大勝負をする前には、「見、ケン」(betしないまま、環境の流れ、そして内なる「なにか」が見えてくるのを待つ)を決め込み、そして内なるなにかが「確信」に変わった瞬間、乾坤一擲の一打を打つんだそうです。
その「なにか」が「+α」であり、それが「確信」に変わって、今回のことになったのかな?と勝手な想像をしました。
(博打の比喩は不適切かも…)
日常なにをするにも、(自由意志の問題はさておき)自分の判断で、大小あれども、時間、もっと言えば命を削ってbetし続けてますよね。削られていったものが、せめて自身の「+α」の種や肥やしになってほしいと思います。
ただし無限に削れるものはタマネギぐらいなもんですから、ご無理はなさらないよう。
どうか今後ともご贔屓に。
(すみません、場所お借りします)
あらのさん、以前の一件からしばらくご無沙汰してしまっており申し訳ありません。またお会いしてお話させていただければと思っております。
(すみません、ありがとうごさいました)
投稿情報: 流しの戯言師 | 2007.05.20 00:01