37歳という若さで急逝したitojunさん。潔すぎる。かっこよすぎる。でも、過ぎたるは及ばざるがごとしだ。ばか、ばか、ばか。なんで死んじゃうんだ。
私は、itojunさんとは、少し距離をおいてきた、と思う。話が噛み合う筈がないと思っていたのだ。
彼には強い使命感、信念のようなものが、あった。Routing Header騒動のときの昂揚そして憔悴ぶりは、凄まじく痛々しく、何度か声をかけようかと思ったが、そういう声かけ自体がspamだというので、ハラハラ見守るしかなかった。彼は「みんなのしあわせのために」と言って突き進む。でも私は、「"みんな"って誰ですか?」「"しあわせ"って何?」といちいち突っかかって考え込むタイプ。
あとあとあと、kimyaiさんの投げかけたmixiスレでのやりとりも、なんだか涙が出る。(kimyaiさんの投げかけ自体が揮っている。そしてitojunさんが言っていることもよくわかる。正しい。彼のロジックは、ある観点からは正しすぎるのだけれども、ある観点からは肝心のところが欠落しているような気もする。)
それでも、カンファレンスやIETFでお会いすると、いつもitojunさんは人懐っこい笑顔で、「どうも~」と話しかけてくれた。転職を一番喜んでくれたのは彼かもしれない。(JunOSのv6 control planeはKAMEをベースにしているので。) v6移行の困難を問う私に、次のようなメールを下さった。
> -----Original Message-----
> From: Jun-ichiro itojun Hagino [mailto:[email protected]]
>
> ISPとかはみんなサボる理由を考えて遅らせているだけなので(一部NTT
> とかを除く)、いまは他のびっくりするような業種から外堀を埋める計画を
> たてています。Juniperとどうからむかはちょっとわかんないんですが、
> 顔の広さを活用してなんとかやります。
> メールだと長くなるんで、日本でも先にお話できれば。
>
> どっちにせよ2010年くらいにはIPv6に行くしか選択はないので、
> あとはこちらとしてはみんなに情報をあげておいて「早くやった方が
> いいことあるよ」とみんなに伝えることではないかと思っています。
> で、ギリチョンに移行するひとは値段が上がる(笑)。
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「日本でも先」に、と書いてあるのは、11月8日にSunnyvaleで本社開発ともミーティングを持つ予定にしていたのだ。それでも話が噛み合うかは自信がなく、何を前提にして何をゴールにするか、今後よい関係を築けるのか、逡巡もあった。でも、まさか亡くなってしまうなんて。
話なんて噛み合わなくてもよいから、もっともっと、何度でも、うるさいと言われるくらい、コミュニケーションしてみればよかった。尊敬する人だからこそ、なぜ私が日々懐疑するか、一つの信念や、一つの技術への過信に危惧を感じるか、というのも、じっくり話してみたかった。もちろん、思考ばかり堂々巡りしているよりは、山ほどCodeを書き、Hackし、Commitし、RFC/I-Dを出し、という方がよいに決まっている。でも、速く進めば進もうとするほど、dullな現実とのギャップを感じ、絶望の深淵をみてしまったのではないかとも思う。
itojunさんは、最期は何をどう感じていたのだろうか。今となっては、ただただ喪失感から抜け出せない。
こんばんは。神様は時に本当にむごいことをなさいます。
直接存じ上げませんでしたが私のハンドルネームが"itobun"でしてよそ様に思えません。この場をお借りしてご冥福をお祈りさせてください。
投稿情報: bun | 2008.01.19 21:45